紀伊國屋書店
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僕はそこまで悲観的ではありません.
たとえ,僕たちが遺伝子のヴィークルで,それがただの生存機械だったとしても,
彼ら(遺伝子)とは住む時間が違うのです.
彼らは何千年何億年というレンジの時間の中に住んでいる.
彼らからすると,僕たちは一回の呼吸ぐらいかもしれません.
しかし,自分たちとはあまりにも違いすぎる時間感覚に生きているということは
ほとんど関係ないと言ってもいいのではないでしょうか.
僕たちが呼吸の仕方をあまり気にしないように,
互いに同じ体に生きながらも,たまにその事実さえ思い出せば
同じ体に生きる同居人として,(大家と賃貸者みたいなもんですかね?)
互いを尊重できると思います.
読むのは,今回で2回目です.
そもそも初めて読もうと思ったのは,
大学のある教授のブログでこの本が取り上げられていたからだったと思います.
その先生のブログではこの本が,今までの先生の人生の中で最も衝撃的な本であると書いてありました.
読んだことを少し後悔したとさえ,書いてありましたっけ
それを見た僕は,その日に大学の本屋にこの本を注文しに行き,
そしてこの本の分厚さに驚きました(笑)
いくつか心に残った部分を引用します.
人種差別とは,肉体的に自分に似た個体と結びつき,外見の異なる個体を嫌うという性質が血縁淘汰によって進化し,それが非理性的に一般化された結果,生じたものだと見ることができるかもしれない.P145
初めて人種差別について,科学的に理由付けをした見解を読みました.
人類の暗い部分も遺伝子で言語化できます.
多くの種では母親は父親より自分の子を確信できる.
母親は目に見え,触れることのできる卵や子供を産む.
彼女には自分自身の遺伝子の持ち主を確実に知るチャンスがあるのだ.
あわれな父親は遥かにだまされ易い.
だから父親は母親ほど育児に熱を入れないのだと考えられる.P154
一方で,子供がより母親を親密的に愛するという事実はないでしょうか?
それは遺伝的な問題ではなく,より身近に長い時間の間一緒にいるからでしょうか?
それともこれも遺伝的な問題で解き明かすことができるのでしょうか?
ある夫婦が自分達で養いきれる以上の子供を作ったとすると,国家,つまりその個体群のうち
当の夫婦以外の部分が断固介入してきて,過剰な文の子供達を健康に生存させようとするのである.P171
ドーキンス以前の生物学者が群淘汰説に走った気持ちもわかる気がします.
人類のように,相互による扶助があまりにも巨大になっている種を目の当たりにしている場合,
それが自分たち人類という種のために行われていると錯覚するのもわかる気がするのです.