MyEnigma

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自殺は孤独だと思い込むことと,小さな悲しみの重ねあわせで産み落とされる.『二十歳の原点』高野悦子


独りであること,未熟であること,これが私の二十歳の原点である.


これまで,いろいろな自殺に関する本を読んできました.




この本も,20歳6ヶ月で鉄道自殺を遂げた著者の個人的な日記で構成されています.





これらの事実を知るにあたって,1つ考えたことがあります.

それは,

自殺は

孤独だと思い込むことと,

小さな悲しみの重ねあわせの二つによって

産み落とされるのではないか

ということです.




どの本においても,自殺の当事者は

自分がひどく孤独だと思い込んでいました.




たしかに,実際に孤独だった人も多いと思います.



しかし,今回の本の高野さんのように,

微妙に対立しながらも,

やさしく見守ってくれる家族がいたり,

政治的・思想的議論ができる仲間や友達が,

少なからずいるのにも関わらず,

自分は孤独だと思い込んでいることが多いようです.



これは,当事者にとっても,

そしてより一層,周りの人にとっても,

非常に悲しい結末でしょう.




そして,そのように自分を孤独だと思っている人が

最終的に自殺を実現するトリガーは,

小さな悲しみの重ねあわせではないかと思います.



例えば,高野さんの場合,

家族との喧嘩,

失恋,

貧乏,

政治活動への疑問と失望,

自分への未来への漠然とした不安.


それぞれ単独では,

死に至るまでの効果はない事象だとしても,

それらが,短期間に同時に降りかかってきたら・・・・




そして,そんな時に,

突然の雨が降り,

身体は凍え,

周りを見回すと,

誰もいなく,

家に帰っても,だれもいないことを思い出す.



そして,そんな時に

たまたま目の前の踏切が鳴り始め,

電車が目の前を通過しようとしたならば.




そんな時に,最後の一歩を踏み越えてしまうのかもしれません.




もし,その時,

たまたま電車が通らなかったならば,

雨が降らなければ,

周りに沢山の人がいたら,

友達から電話がかかってきたら.



今頃,彼女も普通の主婦として幸せに生きているかも知れません.



つまり,これはすべての人の目の前に突然生じ得る

悲しい深淵だと思います.



最後に,高野さんの自殺する2日前の詩を引用して,

冥福を祈りたいと思います.

旅に出よう

テントとシュラフの入ったザックをしょい

ポケットには一箱のタバコと笛をもち

旅に出よう.


出発の日は雨がよい

霧のように柔らかい春の雨の日がよい

萌え出でた若芽がしっとりとぬれながら


そして富士の山にあるという

原始林の中にゆこう

ゆっくりとあせることなく


大きな杉の古木にきたら

一層暗いその根本に腰を下ろして休もう

そして独占の機械工場で作られた一箱の煙草を取り出して,

暗い古木の下で一本の煙草を吸おう


近代社会の臭いのする その煙を

古木よ おまえは何と感じるか


原始林のなかにあるという湖をさがそう

そしてその岸辺に佇んで,

一本の煙草を吸おう

煙をすべて吐き出して

ザックのかたわらで静かに休もう


原始林を暗闇が包みこむ頃になったら,

湖に小船をうかべよう


衣服を脱ぎ捨て

すべらかな肌を闇に包み

左手に笛をもって

湖の水面を暗闇の中に漂いながら

笛をふこう


小船の幽かなるうつろいのさざめきの中

中天より涼風を肌に流させながら

静かに眠ろう


そしてただ笛を深い湖底に沈ませよう.