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エンジニアにとって必読の経営書『イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』

はじめに

普段は、小説と技術書ばかり読んでいるので、

ビジネス系の本は読まないのですが、

知り合いのエンジニアが、

エンジニアなら読んでおいた方が良いと熱弁していたので、

読んでみました。(Kindle版もあります)

この本の問い

この本は

”なぜ、常に技術に投資し、

綿密なマーケティングを実施し、

常に、製品の品質や機能を向上させている優良企業が、

新興企業にマーケットを奪われてしまうのか?"

という問いに答えた作品です。


ですので、大企業(優良企業)に所属し、

今の地位を守らなければならないエンジニアにとっても、

反対に、

ベンチャー企業などで、

新しいマーケットを獲得しなければならないエンジニアにとっても、

非常に興味深い内容になっています。


また、本の末尾の解説に書いてあるとおり、

この著作はハーバードビジネススクールの膨大な研究結果を

わかりやすくまとめたものなので、

科学的な裏付けに基いています。

ですので、非常に内容に説得力があり、

技術的な視点で世界を見ているエンジニアにとって、

非常に心を打つ実例が沢山含まれています。

持続的なイノベーションと破壊的なイノベーション

この本では、イノベーションを

持続的なイノベーションと破壊的なイノベーションの

2つに分けています。


ここでいうイノベーションは、

商品やサービスの発明を指します。


持続的なイノベーションは、

既存の技術などを元にした改善です。

またこの改善の対象は、

既存の技術の”既存性能目標値”の向上の目的としています。

すでに既存の技術が対象としている市場を

より広く得るために、

もともと秀でていた性能部分を

より一層伸ばすようにするためのイノベーションです。


一方で、破壊的なイノベーションは、

これまでの技術を元にせずに、新しい考えから生まれるイノベーションです。

既存の技術を元として生まれていないため、

既存の技術よりもこれまでのメインの性能の面で劣っていることも多く、

それ以外の既存の技術との性能の違いが、

どのように市場に影響を与えるかが、当初の段階では、

よくわからないことが多いイノベーションです。


この著作では、

持続的なイノベーションを非常に上手く実施する優良企業が、

破壊的イノベーションへの戦略を間違え、

別ベンチャー企業に、

市場を奪われてしまうことが多いことを指摘しています。

例えば、コンピュータにおける、

IBMとアップルなどが代表的な例です。


しかも、この本の主張でより一層面白いのは、

優良企業が、より技術に投資し、

より綿密なマーケティングを実施すればするほど

破壊的なイノベーションにやられてしまう確率が高くなるという所です。


つまり、より優良企業であればあるほど、

破壊的イノベーションに対する対応を間違えてしまいます。

なぜ、優良企業ほど破壊的イノベーションへの対応間違えるのか?

上記のようなことが何故おきるかと言うと、

下記の3つの理由が上げられています。

1. 優良企業は大きい市場を狙ってしまうため。

優良企業は組織が大きく、それでも成長率を維持するために、

自ずと大きい市場を狙う商品に注目してしまいます。

しかし、破壊的イノベーションは、

まだ存在しない市場を開拓するものなので、

大きい市場を求める優良企業には注目されなくなり、

自ずと、破壊的イノベーションを避ける方向にいってしまいます。


これは、事前のマーケティングをすればするほど、

陥りやすくなるようです。


すると、ベンチャー企業が破壊的イノベーションで、

一部の市場を席巻した時には、すでに遅くなってしまいます。

優良企業が再びその破壊的イノベーションに投資しようとした時には、

すでにその破壊的イノベーションは、大きな市場も侵食し始めているのですから。

これにより優良企業は破壊的イノベーションに対して失敗してしまうのです。

2. 破壊的イノベーションの正確なマーケティングは困難であるため

前述のように、破壊的イノベーションの市場は無いことが多いため、

事前にお客の声を聞いてマーケティングをすることが困難である場合が多いです。

これは、企業もお客もその破壊的イノベーションがどれだけ有用であるのかが、

わからないからです。


優良企業の場合、新しいことにチャレンジする際に、

事前調査に基づく、マーケティングの結果から、

その技術に投資するメリットを説明しないといけない場合が多いため、

破壊的イノベーションに投資するのが難しくなります。


つまり、ちゃんと事前調査をすればするほど、

成功できるかよくわからないものに

投資するのが難しくなるのです。


ちゃんとした戦略評価を持つ優良企業であればあるほど、

この傾向は強くなってしまいます。


すると、優良企業は破壊的イノベーションに投資しなくなり、

先ほどと同じように、

市場を取られてから自分の間違いに気がつくことになります。

3. 失敗が許されない風土があるため

優良企業では、これまでの成功の歴史があるため、

できるだけ失敗をしないような文化が育つ傾向があるようです。


前述のように、優良企業は大きな市場を狙うことが多いため、

大きな資金を使って一気に市場を攻める傾向にあります。

すると、一つの間違いが大きな損害になるので、

できるだけ失敗しないような戦略を取るようになるのです。


すると、破壊的イノベーションに投資するのを躊躇することになります。

優良企業はどうすれば良いのか?

以上のように、優良企業であればあるほど、

破壊的イノベーションに投資しずらくなるので、

それが優良企業の戦略のミスを誘発します。


重要なのは、

優良企業の技術力や資金が無いわけではないことです。

つまり、やる気になれば破壊的イノベーションを製品化できるのに、

企業の文化として、そのような製品に投資しなくなるということです。


この問題を解決するために、優良企業はどうすれば良いのでしょうか?

この本では、幾つかの対策を提案しています。

詳細は本書を読んで頂きたいのですが、

その中でも一番興味深かったのが、

"破壊的イノベーションのための独自組織を作る"

というものです。


同じ組織ではどうしても、

上記の優良企業の考え方に影響されてしまうため、

別の組織を作ることが重要です。


また、その別の組織を少数精鋭にすることで、

小さな市場でも利益が出るような形にすることで、

破壊的イノベーションであっても、

上記の問題を解決することができます。