読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

MyEnigma

とあるエンジニアのブログです。#Robotics #Programing #C++ #Python #MATLAB #Vim #Mathematics #Book #Movie #Traveling #Mac #iPhone

拡張カルマンフィルタを使用した自己位置推定MATLABサンプルプログラム

Robot

はじめに

移動ロボットの技術において,

自分の位置を知ること,つまり自己位置推定(Localization)は

非常に重要です.

参考: Localization (自己位置推定): 1 - MY ENIGMA


今回,自己位置推定の技術の一般的な方法である

拡張カルマンフィルタ(Extended Kalman Filter:EKF)を使用した

自己位置推定サンプルプログラム(MATLAB)を

作成しました.


カルマンフィルタのアルゴリズムの導出の部分は、

下記のwikiの記事か、

カルマンフィルター - Wikipedia

下記の本を読むとわかると思います。

確率ロボティクス (Mynavi Advanced Library)

確率ロボティクス (Mynavi Advanced Library)

Probabilistic Robotics (Intelligent Robotics and Autonomous Agents series)

Probabilistic Robotics (Intelligent Robotics and Autonomous Agents series)

  • 作者: Sebastian Thrun,Wolfram Burgard,Dieter Fox
  • 出版社/メーカー: The MIT Press
  • 発売日: 2005/08/19
  • メディア: ハードカバー
  • 購入: 1人 クリック: 6回
  • この商品を含むブログを見る



内容はおそらくコードを読めばわかると思いますが,

基本的には,

ホイールオドメトリとジャイロによって入力値を,

GPSとコンパスで観測値を取得し,

それらをEKFで統合しています.


このサンプルプログラムを起動すると,

自己位置推定のシミュレーションを行い,

記事冒頭のようなグラフが得られます.


このグラフを見ると分かる通り,

入力値と観測値に大きな誤差を含んでいたとしても,

高精度な位置計測ができていることがわかります.


それぞれのロボットによってセンサやモデルは異なるので

そのまま使えないことが多いと思いますが,

このコードを修正することで目的の自己位置推定ロジックを作成できるはずです.


質問・意見は@Atsushi_twiまでよろしくお願いします.


サンプルMATLABコード

下記のGitHubリポジトリにて公開しています。

MATLABRobotics/Localization/ExtenedKalmanFilterLocalization/ExtendedKalmanFilterLocalization.m at master · AtsushiSakai/MATLABRobotics

共分散行列の更新において、なぜヤコビ行列で挟むのか?

上記のEKFのアルゴリズムにおいて、

前から不思議に思っていたのが、

「共分散行列の更新において、なぜヤコビ行列で挟むのか?」

ということです。


上記のプログラムでいうところの、

Predictにおける共分散の更新である

PPred= F*PEst*F' + Q;

の部分や、

Updateにおける共分散の更新である

S = H*PPred*H' + R;

のことです。


基本的には、時系列的に一つ前の共分散行列を

ヤコビ行列とその転置行列で挟んで、誤差共分散行列を足しています。

これまで、何故こんなことをしているのかがわかっていませんでした。


今回、少し調べてみたらなんとなく理解することができたので、

メモとして残しておきます。


まず初めに、下記のような基本的な線形モデルを考えます。

MATLABプログラムにおける, Motion ModelやObservation Modelのことですね。


ここで、時刻t-1の時の共分散行列 Σt-1から,

時刻tの時の共分散行列Σtを計算してみたいと思います。


まず初めに、時刻tの共分散行列Σtは, 時刻tの時のx_tの共分散の値なので

となります。

ここでcovは下記のwikiのページにあるように、

ある状態ベクトルの共分散を表します。

分散共分散行列 - Wikipedia


続いて、先ほどの線形システムの式を代入すると、

となります。


ここで、先ほどのwikiの性質5を使用すると、

のように、2つの共分散行列にわけることができます。


続いて、

一つ目の項は、先ほどのwikiの性質7のA=Bの時のことを考えると、

となり、

二つ目の項は、自分のカルマンフィルタにおいては

入力による共分散を、誤差共分散Rと定義しているため、

先ほどの式は、

となります。


すると、cov(x_t-1)は、時刻t-1の時の共分散行列になるので、

となり、カルマンフィルタの式とほぼ同じ式が導出できました。


最後に、

一般的にロボティクスのモデルは、

最初に定義した線形モデルではなく非線形モデルです。

これまでの式の展開は、モデルが線形でなければ成り立ちません。


そこで、ヤコビ行列を使ってモデルを線形化したのが、

拡張カルマンフィルタなのです。


すると先ほどの式のAを、近似されたヤコビ行列Jで置き換えると

となり、目的の式を導出できました。


これが共分散行列を更新する時にヤコビ行列で挟む理由になります。

自分的にはかなりすっきりしました。

カルマンフィルタを身近に感じるために

前述のサンプルコードのようにアルゴリズムを実装すれば

カルマンフィルタを実装することはそこまで難しくはありません。

しかし、カルマンフィルタが実際にどのように機能しているのかを

イメージとして捉えるのは多少難しいと思います。


そこで、非常に簡単な例題を元に、

カルマンフィルタの考え方を説明したいと思います。


カルマンフィルタは一言で言ってしまうと

"2つの確率の重み付き足し算の結果の

誤差(分散)が最小になるように、重みを計算する"

方法であると言えます。


ロボティクスの自己位置推定においては、

デットレコニングの位置情報と、

GPSの位置情報を組み合わせて、

最終的な位置情報の誤差が最小になるように、

それぞれの位置情報の重みを逐次的に計算してるのです。


では、単純な例題でカルマンフィルタの式を導出したいと思います。

まず初めに一次元の2つのガウス分布の状態量(平均x,分散P)

x_a, P_aとx_b, P_bを考えます。

これら2つをどのようにカルマンフィルタは統合するのでしょうか。

ちなみにこの2つのガウス分布は独立であるとします。


カルマンフィルタでは下記のような重み付き線形結合を使用して、

2つの確率を統合します。

式(i)

ここでxは統合後の平均値であり、

aはx_aの重みです。

重みはすべて足すと1になることを考えると、

x_bの重みは1-aとなります。


カルマンフィルタはこのaの値を

xの分散Pの値が最小になるように決定しているのです。


では、分散Pを最小にするようにaを決めるとは、

どのようにするのでしょうか?

まず初めに分散Pは分散の定義そのものから、

となります。

ここでEは期待値を表しており、Δxは平均値からの差を表しています。

すると、この式に先ほどの式(i)を代入すると

となり、これを展開して整理すると、

となります。

ここで前述の通り、aとbは独立なので、

E[Δx_aΔx_b]=0となり、分散の定義をより

E[Δx_a^2]=P_a, E[Δx_b^2]=P_bなので、

式(ii)

となります。


続いて、このPを最小化するaを求めてみましょう。

よくやる方法ですが、

最小値はPをaで微分した値が0である時だと考えます。

つまり、

となり、これをaで整理すると、

となります。


よって、Pを最小化するaの値が決まったので、

これを式(i)に代入すると、

となります。

ここで、この式をじっくりと見てみると、P_aとP_bの値の大きさから

きちんと重み付け足し算をしていることがわかります。

例えば、P_aの値がP_bの値よりも大きかった場合、

x_aにかかる重みは相対的に小さくなり、

最終的な正規分布に対する寄与度が小さくなります。

その分x_bの寄与度は大きくなるのです。

つまり、誤差(分散)が小さいものを信用して、

大きいものを無視するように、確率が計算されるのです。


そして、この式を意図的に変形させると下記のようにできます。

すると、この式が何か見覚えのある式に見えてこないでしょうか?

そうです, x_bを観測値、x_aを入力による更新値と考えると、

x_b-x_aはイノベーション(サンプルコードにおけるy)を表しており、

その前の分数の部分をカルマンゲインKと置くと、

先ほどの式は、まさにカルマンフィルタにおける平均値の更新になるのです。


ちなみに、分散値Pも同じように式(ii)にaを代入すると、

となり、これを再び意図的に変形させると(笑)

となり、先ほどと同様に分数の部分をKと置くと、

カルマンフィルタにおける共分散行列の更新の式にほぼ一致するのです。

(実際はモデルによる遷移があるため、ヤコビ行列などが入ってきて少し形は変わりますが。。。)


以上のように、

カルマンフィルタは、ベースは分散最小とするような重み付き足し算であり、

上記の方法で、カルマンフィルタ(っぽいもの)は導出できるのです。


少しカルマンフィルタが身近に感じられたのは自分だけでしょうか?(笑)

誤差楕円の計算方法

サンプルコード内の誤差楕円の計算方法に関しては

下記の記事をご覧下さい。

カルマンフィルタにおける誤差楕円の計算方法 - MY ENIGMA

その他のロボティクスアルゴリズムのサンプルコード

こちらを参照下さい。

AtsushiSakai/MATLABRobotics